〜9.蜜の味 その二〜


突きと蹴りを三百本づつ、その後は基本を飛ばして組手中心の稽古に移る。
その日参加した三十名強の門下生の中で、黒帯は和希を含め四名。後は茶帯が二十名強、残りは緑帯、黄帯が数名づつ。
皆、次回の昇段、昇級審査を見据えての参加であり、五名の本部の師範を招いての今回の稽古は、幾分殺気立った緊張感が道場内に溢れていた。
中盤の30分以上ぶっ続けで行われる自由組手、和希達黒帯は茶帯、緑帯に胸を貸しながら次々と相手を変えていく。
白帯から始まり、真面目に稽古を続けて強くなれば緑帯までは順調に進む。しかし、茶帯となると途端にそのハードルは上がる。和希達の流派では茶帯であれば、腕自慢の素人が何をしたってほぼ遊ばれるレベル。
しかし、その先の黒帯は遥かその上を行く。茶帯と黒帯の実力差は天と地の差。次回の昇段審査を受ける二十名の茶帯の内、無事有段者となれるのは、恐らく五名もいないはず。
だからこそ、和希達黒帯は道場生達からいつも羨望の眼差しで見られる存在だった。茶帯以下の色帯達にとって黒帯との組手は、逃げ出したくなる程の恐怖心と隣り合わせではあるが、自分の力量を測る絶好のチャンスでもあり、ここぞとばかりに皆全力で黒帯に向かって行くのである。

体がいつもよりも重いな・・・
腕がすぐに怠くなる
午前中、瞳とホテル行ったからだろうけど・・・
分かってはいたけど、実際キツイわ・・・

ズトンッ!
和希の左脇腹に、対峙していた頑強な男の渾身の中段回し蹴りが炸裂する。
自然と中心を逸らして急所を外すが、茶帯とはいえ190センチ近くの身長にプロレスラーのような体格の男の体重を乗せた蹴りは、レバーを直撃しなくとも内臓を激しく揺らし、鋼鉄の筋肉の鎧を纏うとはいえ、和希の呼吸を一瞬止める。
崩れ落ちそうな程の息苦しさを感じながらも、空手家として、ましてや黒帯のプライドとして、それを一切顔には出さない和希。
勢いづいた大男の畳みかけるような連打を凌ぎながら態勢を立て直そうとする。
「高村ぁー!集中しろやーっ!」
他の門下生達が怯むほどの師範の怒号が、道場を揺らさんばかりに響き渡る。
「押忍!」
和希は気を入れ直し、相手の下段蹴りに合わせて軸足の内股に蹴りを入れると、その足を床に着けるや否や、それを軸に目も眩む程の速さで上半身を360度回転させ、後ろ回し蹴りを相手の頭上高く振り切った。
ゴンッ!、と骨と骨のぶつかる音が響き、大男は膝を付く。
まるで軟体動物のように柔らかく、完全にコントロールされた彼の右脚は、相手の側頭部への直撃を避け、頭頂部を掠めるように「軽く」ヒットさせるのみ。
その一連の動きは俊敏かつ華麗で、見ている者は感嘆の溜息を漏らさずにはいられない。
パワー空手が幅を効かせ始めていたこの世界で、和希のような並外れたスピードを備えた空手家はそうはいない。大男はガードする為に腕を上げる暇すら与えられなかった。

危なかった・・・
てか、フリーの最中に何考えてんだ俺・・・
こんなんじゃ二段なんか受かるわけが無い
しっかりしなきゃ・・・

空手家達の地獄の稽古はここからが本番だった。




そんな男達の厳しい世界とは裏腹な光景・・・
和希達が骨を軋ませ、殴り合っていたまさにその時、目の前に美しい女性を膝まづかせ、勃起したペニスをフェラチオさせている男もいた。

喉を強く強く圧迫する感触、私は嫌いではない。いや、寧ろ好きかもしれない
鋼鉄に薄皮を巻いただけのような彼のペニスが私の口の中を埋め尽くし、時には息が詰まる位に、喉を奥まで押し込めるその存在感は、麻薬とはこういうものかもしれないと連想させる程に、私を病み付きにさせていた
ラブホの部屋の玄関で裸にされた私は彼の前に跪き、彼の勃起しきったペニスを夢中になって頬張っている
キスするみたいに口先を伸ばし、唇の口内粘膜をカリ首に満遍なく擦り付け、360度ぐるりと愛撫する
男の人はカリの窪んだところが気持ちいいものだと教えてもらった。だから私はそこに唇を押し付けたり、舌先に力を入れて溝をねぶるようにしたり
彼が気持ち良さそうに声を出し、ピクッと身体を震わせる度に、私はこの上ない性的な満足感に心を満たされてしまう
大きく広がった「傘」を啄ばむ様に吸いながら、唯一柔らかい亀頭の表面を何度も舐め回す
先の割れ目から溢れる透明な液を舌で舐め取り、唇を精一杯窄めて先からギリギリと亀頭を締め付ける様に口に含んでいき、そして顔を引いて先まで戻ると、何度も同じ作業を繰り返す
彼の長過ぎるペニスは、限界まで飲み込んでも半分程度しか入らない
だから私は亀頭を何度も出し入れする事で彼を高め、時には奥まで飲み込んで喉で亀頭を締め上げる、という事も織り交ぜる
彼に教えられた事を忠実に体現すると、彼は私を褒めてくれた
それが嬉しくて益々夢中になってしまう・・・・・
「相手が先生だったら・・・」
涎を垂らして岬さんのペニスを咥えながら、ふと思い出す自分の命よりも大切な人の事
その刹那、心が真っ黒になりそうな絶望の淵に立たされ、その度にタイミングよく岬さんが頭を優しく撫でてくれる
それで私は辛うじてその施しを継続させる事ができていた
いや、辛うじて、ではなくて、開き直って、なのだろう・・・

私は先生に尽くすのが好きだ
美味しい料理を作ったり、身の回りの世話をしてあげたり
先生が喜ぶ事は何でもしてあげたいと思ってしまう
だからセックスでも同じだと思っている
先生が気持ち良くなってくれるなら、何時間だってフェラチオしていたいと思うし、望まれればどんな事だってしてあげたいと思う
ただそんな事を面と向かって言うのは恥ずかしすぎて、行動に移せないだけだ
だけど岬さんには、この人に対しては全てを曝け出す事に、あまり抵抗感がない、いや、その事に歓びすら感じているのは何故なんだろう・・・
・・・私は認めたくないだけなのかもしれない
この人とのセックスが、どうしようもないほど気持ちいいって事を・・・
先生は以前の先生と全く変わらない。たぶん、私の事もそう思われているだろう

そう、今は「たまたま」なんだ
先生に気持ち良くなってもらう為の、練習なんだ
・・・って、馬鹿だ、私・・・本当に馬鹿だ・・・・
こんなに苦しい言い訳をしてまでも、私は岬さんに抱かれる事を選んでしまっている
・・・だけどね・・・だけど岬さんのお陰で何とか先生とも上手くいってるんだもん・・・・・あと少しで約束の一ヶ月が経つ。それまで、いいよね、先生・・・・・
そもそもこんな事になったのは、先生が・・・・・
いや、やめよう・・・・・

瞳は葛藤していた。頭の中で自分の行動を肯定したり否定したり。岬といる時はいつもそうだった。
岬の身体に溺れそうな自分をはっきりと認識していながらも、彼女の最愛の人が和希であるという気持ちは全く揺らがない。
しかし、岬に抱かれて1週間経とうとする今では、そんな思いを岬との逢瀬の最中は以前ほど考える事もなくなっていた。彼とのセックスに嫌でも没頭させられ、そんな事を考える暇を与えられなかったのもあるが、自ら進んで目の前の逞しい身体を悦ばせたい、満足させたい、と思う奉仕の気持ちが強まってきていたからだ。

涎が顎から糸を引いて垂れる程、激しく顔を前後させ始めた瞳の頭を抑制すると、そのまま軽々とお姫様抱っこでベッドまで運ぶ岬。
男らしく、うっとりする程美しい男の顔を下から眩しそうに見つめる瞳。
これから始まるこの男とのセックスを、望まざるとも想像してしまい、彼女のヴァギナからは尻を伝う程愛液が溢れていた。
瞳をおろした後、ベッドの上で窮屈そうにコンドームを付ける岬。
この時点で既に愛撫し、愛撫される余裕を失っていた二人は、そのまま即座に繋がる以外の選択肢を選ぶ事はなかった。
獣のように襲いかかり、一気に3分2まで貫くと、引く腰で膣の内壁を大きな傘で擦りあげる。
余りの快感に、瞳は両手で顔を覆いながら背筋を反り返らせる。
岬が瞳の豊満な乳房を指先が埋没する程両手で鷲掴みし、数回腰をストロークさせた時、彼女は一度目のアクメを迎えた。
そしてお腹と下半身の痙攣が収まった後、再び優しくピストン運動を始める岬。
絶頂のピークが下り坂を向かえようとした時にピストン運動を再開され、エクスタシーの頂上付近を彷徨う感覚に陥った彼女は、恐さすら感じ始めていた。

「あっ!あっ!あっ!あっ!い、いやっ!いやぁっ!・・・こ、こんなの・・・あっ!あっ!あっ!あっ!」
「瞳、マジ気持ちいいよ・・すっげえ締まる、瞳!ああっ!瞳!」
「恐い!こ、こんなの、恐いよぉ!」
「瞳!瞳!」

何も見えない・・・
先生と朝この部屋で正常位でしていた時は、15個あった天井のシャンデリアの電球の数を数える事もできていたのに・・・
先生の上に乗っている時には、目の前の壁紙の模様の中に小さなハートが沢山散りばめられているところも見えていたのに・・・
今はその壁の色さえ、よく分からない・・・
今はここがどこなのかすら思い出せない・・・
わけが分からない・・・気持ちよ過ぎて・・・おかしくなりそう・・・・
もう、何も見えないし、見たくない
彼の・・・顔以外は・・・
今だけ・・・・今だけだから・・・・・

瞳は押し寄せる暴力的な快感の波に歯を食いしばりながら目を開け、岬の顔を見つめた。
乱れた前髪の隙間から彼の眼差しを感じ、見つめあった時、彼女は二度目のアクメに襲われた。
絶頂を迎える嬌声を何度も叫びながら、彼女の両脚が彼の腰をキツくカニ挟みし、ガクガクと激しく揺れる。

岬が上体を倒し、汗で濡れた上半身を密着させると、彼女は顔を起こして彼に口づけをした。
舌を彼の口中に忍び込ませ、縦横無尽に暴れさせた。
彼の口から溢れ出る涎を自然に飲み干し、それでもまだ足りないと言わんばかりに彼の舌に絡め、吸い上げていた。
岬は彼女のキスを受けながら体重を彼女の上半身にかけたまま、両手で彼女の尻を少し開くようにキツく掴むと、ペニスを根元までゆっくりと挿入していった。
塞がれた彼女の口から苦しそうな声が漏れ始め、それは彼のペニスが全て収まった時に、一段と大きな声となって二人の口元から放たれた。
二人は両手を恋人繋ぎにすると、長大なストロークのピストン運動を再開した。

「あっ!おっ!おぉっ!大っきい!・・・お、お、お、すっごい・・・奥が・・・奥が・・・深っ!・・・・・」

彼が膣の奥に亀頭を押し付けてグリグリした時、彼女は三度目の絶頂を迎えた。

「もう・・・ダメ・・・本当に・・・・・死んじゃう・・・」

弱音を吐く瞳を裏返し、腰を持ち上げ、バックの態勢の彼女の尻にむしゃぶりつく。
両手で臀部を開かれ、全てを岬の眼前に曝け出し、ざらつく舌の感触がはっきりと分かる程、アナルからヴァギナまでを何度も何度も愛撫された。

は、恥かしい・・・全部、私の恥かしいところ全部、岬さんに見られてる・・・
や、やだ、そんなに開かないで・・・
あ、あああっ!入ってくる・・・岬さんのが、また・・・
あああっ!ああああああっ!

身体を支える事が出来ない程にいかされまくった彼女は、ヴァギナから全身に広がる例え様の無い快感によって再び覚醒し、動物のような四つん這いの姿勢で高く尻を上げると、心からの嬌声をあげた。
「凄っ!岬さん!凄いっ!・・・あっ!あっ!あっ!あああっ!・・・んはっ!はぁぁぁぁぁっ!」

玉のような汗が背中を滑るのを上から眺めながら、岬は瞳の細い腰を両手で支えてゆっくりとペニスを出し入れしていた。

本当に凄いな、こいつの身体
赤ん坊のようなぷるんぷるんの肌に長い手足、形のいい大きな胸、細く括れた腰にあそこが名器とくれば、誰だって離したくなくなるよな
抱けば抱くほど、病み付きになるわ・・・
これでリカコみたいな積極性があれば言う事なしなんだけど・・・
まあ、そういう風に仕込めばいいんだろうけど・・・

「瞳、そのまま腰振ってみてよ」
岬は動きを止めて瞳に命令した。
振り向いた彼女は困惑の表情を隠さない。
「ほら、上に乗って腰振りまくってたじゃん、あんな風にしてみてよ」
瞳は前を向くと、両肘を付いて腰をクネクネと振り出した。
膣の中にぴっちりと隙間なく収まっていた彼のペニスが、左右上下の膣壁から刺激を受け始める。
「あ、凄い気持ちいい・・・瞳、上手だよ」
岬に褒められ、瞳は益々腰を卑猥に振り出す。
結合部分からはねちゃねちゃと卑猥な音、そして白濁した粘り気のある液体が岬の陰毛をベットリと濡らす。
綺麗な背骨のラインが左右にユラユラと蠢く様を見ていて、岬は言いようの無い欲情にかられそうになっていた。
それはリカコや麻衣に対しては存分に叩きつけていたS的な欲情。
相手を滅茶苦茶に犯したくなる衝動にかられ、どうにも自分自身を抑えられない程に高まっていたのだ。
そして、ふいに言った瞳の言葉、
「岬さんも・・・動いてぇ・・・」
岬は瞳の尻を掴むと、怒涛のピストン運動を始めた。
太く長いペニスが彼女の膣の奥を突きまくる。
肌と肌がぶつかる音が部屋中に響き渡る。
肉付きのよい瞳の尻が、岬の腰が叩き付けられる度に、たわわに波紋を作る。
彼女は突然の事に勢い余って前のめりにシーツに顔を押し付ける格好になった。
それでも彼のストロークは止まず、いや、より一層激しさを増していった。
「おおぉ、瞳・・・瞳・・・」
もはやヘッドレストに頭をぶつけ、首が曲がる程に窮屈な姿勢になる瞳。それでも彼の腰は何かに取り憑かれたように激しさを増すばかり。
「あっ!ひっ!ひっ!ひっ!あんっ!あっ!み、岬さんっ!・・・や・・・いや・・・ふ、ふあっ・・・あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!」
全身の筋肉が盛り上がる程力みながら腰を叩きつける岬は、あっという間に高まっていった。
「ああ!出るっ!瞳!出るっ!」
「私!・・・また・・・」
自分の背中にしがみ付きながら果てる岬の荒々しい呼吸を彼女は感じながら、無理矢理上体を捻って夢中になって彼の唇を吸っていた。

「魂まで抜かれた感じだよ」
そう言って彼女の膣からペニスが抜かれた時、一抹の寂しさを感じてしまっていた瞳。思わず、ああっ・・・と声が出てしまった。
呼吸を整えながら、気怠い身体をそのままに、彼女は天井を見つめていた。

苦しい・・・そして私の身体・・・凄く熱いまま
ずっと入れらていたからなのだろうか・・・何か、彼のが出ていくと、少し寂しい気もする
だけど・・・

彼女はふと彼の股間を一瞥した。

・・・え?・・・岬さんの、まだ勃ったまま?
今出したばかりなのに・・・
それに・・・なんだか凄く窮屈そう・・・
コンドームって、こんなにキツく締め付けるものなのかな・・・

瞳は身体を起こすと、思わず彼の下腹部に手を伸ばし、彼のペニスに被さったコンドームを器用に外し始めた。
その一連の動作に躊躇いが全くないわけではないが、自ら進んでこのような行動を起こせるのは、セックスは女の方が積極的になる事が、時には男を悦ばせる事があるという事を岬から教わったから。
実際、そのように行動を起こしてみると、都度反応を示す岬の態度に、このうえない満足感を得ることが出来たし、自分自身、奉仕する事で下腹部の奥が疼くような感覚を覚え、淫靡な欲求が満たされていく事を認めざるを得なかった。

最初ほどの硬さはないが、それでもタイトに締め付けられたゴムを外した時の開放感に、岬でなくとも安堵してしまっていた。
精液に塗れた彼のベニスに指を絡め、その指が二本から三本、四本と増え、結局最後は五本の指でそれを握るように上下に扱いていた。
にちゃにちゃと音を立てながらスライドされ、岬は再び勃起の兆しを感じていた。

反り返るペニス、瞳はそれをいつしか両手で扱き、口を寄せていた。

凄くドキドキする・・・
さっき出したばかりなのに、またこんなに硬くなってくれている
なんだか、愛しさすら感じる・・・彼の、これに・・・
また・・・舐めたい・・・
気持ち良く、なって欲しい・・・
フェラチオ、したい・・・

亀頭を口に含み、両手で微妙に竿を扱きながら、岬の事を気持ち良くしたい一心で彼女は目を瞑り、その動きを加速させていった

ヤバい・・・終わらないよ
私、彼とのセックス・・・終わらせないといけないのに・・・
このままじゃ・・・

「瞳の彼氏?あの人は」

え?・・・

口に咥えたまま、彼女の動きが止まる。

「誠実な感じの、いい人っぽいね」

私の頭を撫でながら彼が言う。
そうだよね、見られてたんだもんね、私達・・・
だけど、岬さんに先生の事褒められると、なんだか変な気持ちになる・・・

「瞳が選ぶ人だから、凄い人なんだろうな〜」

当たり前だよ、そんな事・・・
でも何だろう・・・あんまりいい気しないのは、何故?・・・

「瞳ちゃん、今日まだ時間あるよね?」
「・・・・・・」
「俺、もっと一緒にいたいよ、瞳ちゃんと」
「・・・ごめんなさい・・・」

私、もう帰らなきゃ
帰って先生とごはん食べなきゃ
岬さんの気持ちは・・・
でも、帰らなきゃ
もう、ダメだよ・・・

「ごめんなさい、もう帰らないと」
「どうしてもダメ?」
「うん・・・シャワー、浴びるね」

ゆらゆらと立ち上がり、辿々しい足取りで浴室に向かう彼女の後ろ姿を彼は眺めていた。





全身が痛い
と言っても、決して心地悪いものでは無い
結局、黒帯含め30回以上の組手をこなしたかな・・・
久し振りにいい汗かいたよ・・・
自分の弱点も分かったし、ラスト一カ月弱でやるべき事も見えてきた
本番は何が何でも倒れない様にして20人組手を完遂しなくちゃ・・・
初めての挑戦で二段受かるなんて夢みたいな話だってのは分かってるけど、師範も言ってたし。残り死ぬ程稽古すればいけるって
兎に角、あと一ヶ月ガムシャラに空手に打ち込んで、その後は司法試験までまっしぐら、だ
・・・あっと、あれを忘れちゃいけないな・・・
大事なイベントだから・・・瞳は覚えてないかもだけど・・・

和希は夜空を見上げながら、その時の瞳の事を想像した。

きっとビックリするだろうな・・・
どんな顔するのかな

彼女の事を想うと自然と笑みが零れてしまう。まだ7時前の閑静な住宅街では、まばらではあるがすれ違う人もいる。
和希は表情を引き締めると、宮條家の玄関を開けた。
「ただいま〜」
「おぉ、おかえり、どうだった?」
「あ、お父さん。まあまあっすよ」
「そうかい、でもその腕、一応手当てした方がいいんじゃないか?おーいっ!葉月ぃ!葉月よぉ!」
気が付くと両腕がパンパンに腫れていた。
深く皺が刻まれた風格のある顔付きの宮條、つまり瞳の父に促され、葉月に湿布を巻いて貰った。
「和希君、これじゃあ鉛筆持てないんでないの?」
「大丈夫だよ、鉛筆なんて持たないから」
「へ?」
「ボールペンしか使わないし」
したり顔の和希。子供じゃないんだから、鉛筆なんか使いません、という小馬鹿にした態度で葉月を斜め上から見ていた。
「・・・・・・怪我人が、上から目線じゃいけません」
「う、うわっ、痛たたたた!」
葉月にわざとキツく巻かれ、思わず悲鳴を上げる和希。二ヒヒと笑う葉月の立ち膝の奥にパンツが見えた。
「あ、あの、ところで瞳は?」
「お母さーん、お姉ちゃんは?まだ?」
葉月と一緒に食堂に入ると、四人分の食事がテーブルに並べられていた。
「あぁ、和希君おかえりなさい」
「ねえ、お姉ちゃんは?部屋にいるの?」
「今日遅くなるってさっき瞳から連絡あったよ。食事は外で済ませてくるからって。友達と会ってるみたい」
「ヘェ〜。だって、和希君」
「そうなんだ・・・」
心もとない反応をする和希の側にニヤニヤしながら歩みよる葉月。
「そうガッカリしないでよ。何なら私がお世話してあげようか?部屋の掃除でもしようか?」
愛らしい顔の葉月に悪戯っ子のようににじり寄られ、一瞬怯んだものの、「逆に俺が勉強見てあげようか?」と返す。
すると葉月は何も聞こえません、という表情を大袈裟にして逃げて行く。いつものやり取りだ。

宮條を交えた四人で食卓を囲む時、話題は大抵法律の話。法律家の父と和希が喋る話の6割りは仕事の話。志が一緒の二人にとって、仕事が人生そのものと言えたのだ。
そんな時の和希の頭の中は法律一色。瞳の事を忘れる唯一の時間でもあった。
夢中になって話す二人をあきれた様に眺める母と葉月。
「また始まった、この二人。今日も遅くまで座談会かね〜」
「本当、好きだよね〜、ったく」

賑やかな食卓も宮條家の日常、そして法律の堅い話で食卓を囲むのも宮條家の日常には違いなかった。





遡ること30分前、ここは渋谷のホテルの一室。
乱れたベッドの上に人影は無い。
しかし、玄関に脱ぎ散らかされたままの男女の洋服の存在から、この部屋にはまだその洋服の主がいる事は間違いなかった。
ベッドの隣に位置する浴室は、その壁一面が曇りガラスになっており、中から微かにシャワーの音が聞こえていた。
岬と瞳はその中にいた。

岬に壁に押し付けられるようにして抱きすくめられていた瞳は、彼の首に腕を回してディープキスをしていたが、その表情は険しく、まるで何かを我慢するかのように眉間にシワを寄せていた。しかも一粒二粒と涙を溢れさせながら。
岬に片脚を抱えられ、彼女のヴァギナには彼の勃起したペニスがずっぽりと根元まで収まっていた。
彼女の表情が険しいのは、奥を貫かれそうな強烈な圧迫感を我慢していたから。
彼女の頬を涙が伝うのは、ありのままの彼を受け入れた後悔から。
一切動かずに、彼女の子宮を打ち破ろうとする彼のペニスにコンドームは付いていなかった。
岬の肉棒に瞳の白濁した愛液が直接絡みつき、糸を引いていた。

ダメ元でシャワールームに入ってみたけど、瞳、拒まなかったな・・・
凄く悲しそうな顔していたけど、何も言わずに俺を抱き締めてくれた。生で挿れようとしても嫌がらなかったし・・・
なんか、壁を超えたかもな、瞳は・・・
それにあれだけ硬かった子宮口も、少しづつ柔らかくなってきたみたいだ
このまま、いけるかな・・・

下から瞳の身体を支え、重力に逆らうように硬いペニスで子宮口を押し破ろうとする岬。
五分以上そのままの体勢でいると、こなれてきた瞳の奥の奥にある最後の砦は、少しづつ彼の身体の一部を彼女の体内の奥深くへ導こうとし始めていた。
既に彼の唇を弄る余裕を失った彼女は、ただ只管彼の身体にしがみ付き、顔を彼の肩に埋めてその時を迎えようとしていた。

「ん、んんんっ!・・・んはぁっ!・・・・ああああっ!」
「もう少し、もう少しだから、瞳」

自然と喉の奥から絞り出される声。気持ちが良いのとは違う
ただ、信じられない程深いところに彼が入ってくる感覚は、今までとは比べものにならないくらい、彼との一体感を感じさせるものだった
彼のペニスが私の身体の一部になるような不思議な感覚とでも言おうか・・・
ゴムを付けないで彼を受け入れたのは、バスルームだったから?・・・取りに行くのが面倒だったから?・・・いや、そうじゃない
彼がバスルームに入ってきた時、私にこう言った
「今だけは俺の恋人になってほしい」
もう何度も見ている彼の身体、なのにこんな事を言われて、私は彼の侵入を拒むことが出来なくなっていた。身体が固まった、ていう奴だ
射精したばかりなのに、お腹につく位に興奮している彼のペニスが目に入る
私の身体でそうなっているんだよね?
そんなにも私を抱きたいんだよね?
うん、嬉しいよ・・・もう、本当に、単純に嬉しいだけ・・・それだけだから・・・
だから、好きにして、いいよ・・・
今だけは、貴方の彼女になるわ・・・
そう思って私はそのままの彼を受け入れた
だけど・・・すぐに後悔した
彼のペニスが私の中に入ってきた時の、そのゴツゴツした形、暖かさが直に伝わる感触に、私は後悔したんだ
これは・・・ダメ・・・こんなの・・・ダメになる・・・
先生にも許したことが無いのに・・・
自然と涙が溢れた
だけど、もう遅い・・・・・
下腹部を支配する不思議な感覚の中で、私は彼にしがみついてただ涙を流すだけだった

「ヌルッ」と、亀頭が彼女の体内をくぐり抜けるのを感じた。
彼の巨大な亀頭が、ついに子宮口をくぐり抜けた瞬間だった。

ああ、すげえ気持ちいい・・・
カリ首が360度から締め付けられるこの感じ・・・たまんねえ・・・
少しだけ動くからな
ああ、やべっ・・・出そうな位気持ちいい
でも、ここで出したら、いくら安全日だとは言っても妊娠するかもな・・・
あ、なんか出てる?
瞳、失禁?潮吹き?なんか生暖かいのが大量に出てるけど・・・
・・・ああ、まじ気持ちいい・・・

瞳は必死になって彼にしがみつき、初めての感覚に耐えていた。
子宮口が破られた感覚はあった。痛みはないが、今まで感じることが無かった所で、明らかに彼のペニスの存在を感じていたのだ。
岬は小刻みに動いた次の瞬間、太くて長いペニスをズルリと抜くと、彼は二人の密着した下腹部にそれを挟み込むようにして激しく腰を上下させた。
ぴゅっ、ぴゅっ、と熱い精液が二人の間を満たしていく。
ゆっくりと身体を離していくと、彼の割れた腹筋と彼女のふくよかな下腹部の間で糸を引く岬の精液が見えた。亀頭はまだ脈動し、最後の一撃を射出させていた。
「また沢山出ちゃったよ」
「うん・・・・・」
「恋人とのセックスって、やっぱ最高に気持ちよかった」
「・・・・・」
岬の言葉に返す事が出来ない瞳。
恋人、という言葉に、思わずはにかむ様に俯く彼女の表情を彼は見逃さなかった。
「あのさ、少なくとも二人でいる時は瞳の事、恋人、と思っていいだろ?」
「え?・・・・・」
答えない瞳を見ながら、岬はそれ以上は聞くのを辞めた。あえて今その事をはっきりさせる必要はない、ただ大抵の女が骨抜きになる「恋人」という言葉が持つ魔力が、瞳にも作用する事を確認できただけで良かったと思っていたのだ。
岬は指で彼女の大きな臍に溜まった精液をしつこくほじり出していた。人差し指の第一関節まで埋没させて、ヌルヌルになった深い臍の中の精液を必要以上に掻き回し、その感触を楽しんでいた。
その後、彼は瞳の身体の隅々まで洗い流してくれたが、瞳は彼の身体を洗い流すことはなく、礼を一言いってそのまま逃げるように浴室を出て行った。
彼の半立ちのペニスを見て、精液を洗い流してあげたい、一瞬だが口で綺麗にしたいとさえ思ってしまったその衝動を辛うじて抑えて彼女は浴室を後にしたのだ。これ以上のスキンシップはどうして避けなければならない、と本能的に思ったから。

ブラとパンツを身に付けてベッドに腰掛けた瞳は、虚ろな表情でメールを打っていた。今更帰っても、もう夕食には間に合わないと思った彼女はその旨を母にメールしていた。
そして、一旦携帯の画面を消したあと、もう一度起動して写真フォルダを開いた。
和希の写真を見るためだ。

家庭教師として瞳の机の隣に座る和希
家族と和希とで旅行に行った時に撮ってもらったツーショット写真
仕事中の和希
デート中の二人の写真

それらを眺めながら、温かい気持ちになるのと同時に、凄まじいまでの寂寥感につつまれる。
涙が溢れそうになるのを我慢して画面を閉じようとしたところに岬が戻ってきた。慌ててシーツの間に携帯を隠す瞳。
岬に後ろから腕を回されて耳元で囁かれた。
「悲しそうな顔してる。どうしたの?」
「・・・・・」
「彼氏のこと・・・考えていたの?」
「・・・・・」

そうだよ、って答えればいいの?
それを期待しているの?岬さん
でもね、そういうの、やめて欲しいんだ・・・
私達の事は放っておいてほしい
貴方の口から先生の事、聞きたくない
思い出してよ・・・貴方といる間は、私逃げてるんだから
現実の世界に戻さないでよ・・・
これは、今は、全部、全〜部、嘘の世界の事なんだから
私、本当はこんな子じゃないんだよ?
男の人のアレを咥えたり、何度もイっちゃったりとか・・・本当は私、そんな女の子じゃないんだから・・・
今だけなんだから・・・

「ごめん、瞳、余計な事言って・・・」
「うん・・・」
「俺は、今こうして瞳と一緒にいられるだけで充分だよ」
「・・・・・」
「恋人として、瞳の身体と触れ合っているだけで幸せなんだ、俺」
「・・・・・」
「愛してる、瞳」

また、言った・・・岬さん
そういうのやめてって言ったのに
肩から回された逞しい腕・・・離してくれないかな・・・
あ、・・・耳にキス、しないで・・・・ダメだって、反則だよ
それに・・・背中に当たってるのって・・・・・また?なの?・・・・

岬はゆっくりと瞳をベッドに押し倒すと、自分の腰に巻いたタオルを外し、瞳のたゆやかな胸を跨ぐようにした。
彼女の眼前に、彼女の顔よりも大きい彼のペニス、つい先ほど二度目の射精をしたばかりのペニスが、青筋を立ててその存在感を誇示していた。
瞳はそれを冷めた目で暫く見つめていたが、岬が催促するかのように若干腰を前に動かした時、彼女は舌先で根元から大きく膨らんだ亀頭まで、一気に舐め上げた。

本当に、いつまで続くの?この人とのセックス・・・
永遠に続くの?・・・

瞳は焦点の定まらない目を閉じ、大きく口を開けて彼のペニスを含んだ。



子宮口を滅茶苦茶に犯されながら連続で5回もイかされ、最後に彼の射精を口で受けたのはそれから30分後だった
彼に手に持ったティッシュにそれを吐き出すよう促されたが、どこか悪いような気がして、私は全てを飲み干した
そして二人で入ったシャワーで、今度は私が彼の身体を隅々まで洗ってあげた
彼の逞しい胸板、背中、お腹、お尻、足・・・そして、下を向いた彼のペニスも丹念に洗ってあげた。頭の中で事切れていた私は、欲望のまま彼の引き締まったお尻に舌を這わせ、彼が私にしてくれたように、アナルにまで奉仕した
そして、柔らかいペニスをフェラチオした。兎に角、彼のものをフェラチオしたかったから。こんなにまで気持ち良くしてくれた彼の逞しいシンボルを、大切に、でも激しく口で愛撫してあげたかったから
彼の四度目の射精を口で受け、飲み干し、彼とのセックスがやっと、やっと終わった
気が付いたら私は涙を流し、涎を垂らし、ヴァギナからは失禁したように大量の水分をま散らし、彼の精子を嚥下しながらイってしまっていた

セックスって、こういうもの?・・・・
それとも、彼が特別?
私、この人に身体の全てを支配されてしまったような気がする
私自身が知らないところもこの人は知っているような気がする
蹂躙とも言えるかもしれない
いや、私はこの人に蹂躙されて、幾ばくかの喜びを感じているのかもしれない
泣きながら彼のを頬張って、失禁までして・・・・こんなにだらしない醜態を晒して
今更恥ずかしいも何もない
私、この人に蹂躙されて喜んでるんだ、きっと・・・
所詮、この程度の女なんだ、私は・・・


部屋を出たらすぐにでも彼と離れたかったのに、彼がどうしても一緒に行きたいというお店に行くことにした。ホテルを一歩出たら距離を取って歩くという条件付きで
部屋からホテルの出口を出るまでは、ずっと手を繋いでいた。口紅が取れるからと言って、彼はキスしてこなかったけど・・・別にいいのにそれくらい、と一瞬でも思ってしまった自分に嫌気がさした

門を出て彼の手が離れた時、私は空を切る左手に寂しさに似た違和感を感じたけれど・・・
ううん、いいんだこれで。私、現実に戻るんだから
宮條瞳に戻るんだから・・・

1メートル位の距離で彼の右後ろを歩いた。
青山通りを一歩入ったところのお店は、若い女の子の御用達だというセレクトショップ。雑誌で一度見たことがあったけれど、主にOLをターゲットとした少し大人びたデザインのアイテムが揃ったそのお店には行った事が無かった。
店に入るや否や、店員と言わず客と言わず、一身に彼女達の視線を浴びてしまい、やや戸惑ってしまった。ひょっとして、ついさっきまでホテルに居たことがバレてしまっている?と錯覚するほど、瞳は恥ずかしい思いにドギマギした。
だが、店員に「凄く格好良い彼氏ですね」と言われて、初めてその視線の意味が分かった。
店の女性の誰もが彼の存在に気付くと頬を赤らめ、チラチラと何度も見ていた。そして、必ずその後に瞳の方も見る。まるでこの男に釣り合った女かどうかを品定めするかのように。

まあ、確かに格好いいもんね、岬さんは・・・・

岬は瞳の彼氏でも何でもない。
だが、瞳はこのシチュエーションに悪い気はしなかった。

この店で彼にプレゼントされたサンダルの紙袋を手に、二人はプリクラを撮ろうとしていた。彼に食事に誘われたが、それを頑なに固辞すると、せめて写真くらいは、という事で決まった話。
一枚だけ写真を取って二人の携帯に送信し終え、駅で別れたのは8時位。
揺れる車内で紙袋の中身を覗く瞳。

岬さんがくれたこのサンダル、凄くヒールが高い・・・
キスし易くなるから、と言っていたけれど、動機が不純だよね・・・なんかちょっと可笑しい・・・
まあ岬さんらしいと言えばそうだけど

彼女は別れ際に岬に言われた言葉を思い出した。
「今日は少しだったけど、瞳ちゃんの彼氏になれて嬉しかったよ」
少し前までの瞳なら、こんな事を和希以外の男から言われたら気分を害していたかもしれない。
だが、今の瞳は違った。
辛い時に支えてくれた岬の事を、一人の人間として信頼している。そんな相手に言われたこの言葉、素直に嬉しいと思えた。
そして最後に耳元で囁かれた言葉。
「明日も待っているから。恋人セックス、しような」
この言葉にはリアクション出来なかった。
確かにあと10日弱、彼の部屋に行くことにはなっている。だが、それは彼に抱かれることが目的ではなかったはず。
結果として最近はほぼ毎回抱かれていたのにも関わらず、抱かれる為だけに彼の部屋に行くなんて有り得ないと彼女は思っていた。
まして瞳にとって恋人はただ一人、和希しかいないのだから・・・・・
ただ、今日のような「恋人セックス」を思い出すと、正直理性が働くのかどうか自信を持てなかった・・・・・
瞳はそう考えながら複雑な表情をすることしか出来なかったのだ。

電車の中でイチャつくカップルを横目にしながら手元の携帯に視線を落とした。

岬さん、さっきのプリクラは消させてもらうね
やっぱ先生以外の人の、とっておきたくないから・・・

そう思って改めて写真を見ると、直立不動で並んで立つ二人。その間の微妙な距離感もあいまって、ギャグとしか思えない出来に、思わず溜息交じりの笑がこぼれてしまう。

まあ、これはこれでいいか・・・バカみたいだしね

携帯を閉じ、駅を降りていつもの道を自宅へと向かっていた時、彼女の携帯が鳴った。

麻衣からだった。

日向の自分に戻ろうとしていた時に不意に来た彼女からの連絡に、思わず歩を止め、立ち竦んでしまった。気を抜くと、その場にへたりこんでしまいそうな程脚が震えた。
これまで瞳を悩ませ、彼女の生活を一変させてしまった「事件」の核心を握る張本人からの連絡。待ち焦がれていたはずの麻衣からの連絡なのに、すぐに電話に出ることが出来ないでいた。
その電話を取ることで、和希との関係含め全てが終わるだろうと考えていた瞳は、辛うじて彼女を支えていた脚だけではなく、携帯を持つ手さえも震えるのを抑える事が出来なかった。
せっかく来た麻衣からの電話、呼び鈴が4回、5回と続く。
瞳は頭の整理がつかないまま、電話に出た。

「もしもし瞳?久し振り!」
「あ、久し振りだね」
「あのさ、明日暇?ちょっと買い物付き合って欲しいんだけどさ」
「か、買い物?」
あまりにも明るいままの、いつもの麻衣の声。その声には、後ろめたさは微塵も感じられなかった。
戸惑った瞳は次の言葉が出なかった。
「瞳?聞いてる?」
「え?あ、うん・・・」
その後、明日の買い物の目的やら、欲しいものやらを楽しげに捲し立てる麻衣の声は、殆ど瞳の耳に入っていかなかった。
「さっきから、う〜ん、てそればっか。瞳、なんか変だよ?何かあったの?」
「え?・・・いや、何かあったって・・・」

それを聞きたいのはこっちだよ、麻衣
なんでそんなに明るく私とお喋りできるの?
その前に、私に言うべき事があるんじゃないの?
それとも・・・私にバレていないとでも思っているの?
麻衣・・・麻衣って、そんな子じゃないよね?

脚を震わせ、電話に出る事を躊躇していた瞳はもういなかった。
麻衣への思いが強過ぎて、臆病な彼女からは想像も出来ない程、瞳ははっきりとした口調で麻衣に言った。
「高梨君から、私相談受けてたんだよ?」
「え?・・・・ああ、うん」
「麻衣がした事って、許される事なの?」
「・・・ごめん、瞳・・・その事は」
「その事は、何?」
「あの、多分誤解もあると思うから・・・」
「誤解?」
「うん・・・ごめん、今度必ず説明する。ちゃんと瞳に話す」
「・・・私、それを聞くまで、麻衣とは笑顔で話なんか、出来ない」
「うん・・・ごめんね・・・今度、必ず話すから・・・本当にごめん」

電話はそれで切れた
待ち焦がれたその電話は、僅か5分程度で終わってしまった
涙が止めど無く溢れてくるのは何故なんだろう
結局、麻衣からは何も聞けなかったのに・・・・
でも、ごめんと、確かに彼女は言っていた
否定してくれなかった・・・

瞳は自宅の前を通り過ぎ、和希の部屋の灯りが点いていることを確認すると、躊躇なく部屋の呼び鈴を鳴らした。
突然の夜の訪問者に、若干訝しげな表情でドアを開けてくれた和希の顔が見えた途端、瞳は抱きついていた。
「あれ?瞳、どうしたんだよいきなり」
「先生、ごめん・・・あの、何も言わずに抱き締めて・・・」
「え?・・・うん・・・」
玄関先で固く抱き合う二人の足元には、岬からのプレゼントが入った紙袋が落ちていた。
和希は突然の恋人の訪問に戸惑いつつも、友人と喧嘩でもしたんだろう程度にしか考えが及ばず、瞳に言われるまま、強く彼女を抱き締めるのみ。

先生に抱き締められている時が一番好き
先生の匂い、厚い胸板、鼓動、温かさ・・・その全てが愛しくて、愛し過ぎて、私はもうそれだけで他には何もいらないとさえ思えてしまう。自分の命ですら・・・
こうして抱き締めてもらえると、私の決心が揺るがない事を確信する
例え先生と麻衣との間に何かがあったとしても、私はこの人を諦める事なんか絶対にしない。諦めるくらいなら、死んでしまった方がいい・・・それくらい私の人生とって、かけがえのない人・・・
私の心と身体、細胞の一つ一つが先生を必要としている
・・・だけどね・・・・最近一人でいる時に凄く不安になる事がある・・・
先生の気持ちが私から離れていってしまわないだろうかって
そして、私の決心が本物なのかなって・・・
こうして貴方の腕の中にいる時だけは安心できる。だから、ね・・・ずっとこうしていたいんだ・・・できればいつも貴方の傍において欲しいんだ・・・

「先生?」
「ん?どうしたの?」
「あの・・・今夜、部屋にいてもいい?」
「・・・・・」
縋るように和希を見つめる瞳。
和希はほんの少し躊躇した後、何も言わずに部屋に入れてくれた。

その夜、私は先生に抱かれた
一日で2度抱かれるのは初めてだ
先生と繋がっている時は何も考えなくていいんだ・・・
今この瞬間の彼の温かさだけを感じていればそれでいい
この安心感で私は全てを忘れることが出来るから
私の中で果てる先生を感じているだけで、こんなに幸せな気持ちになれるなんて・・・私はやっぱりこの人の為に生かされているとさえ思えてしまう
この人とのセックスにエクスタシーなんか必要ない
先生と一体になれる幸せに勝るものなんて、この世の中には有り得ない
だから先生・・・私を傍にいさせてね・・・
私の事、絶対に離さないで・・・

瞳は和希のコンドームを外してあげると、そのまま彼のペニスを初めて口に含んだ。まだ硬さの残る彼のペニスを、大事に優しく、優しく愛撫した。
和希はその行為に少しだけ慌てるが、その時の二人を包む空気が、瞳のこの大胆な行為を自然な流れてとして収めてしまっていた。
射精後の倦怠感、そして愛する女が自分の股間に顔を埋め、愛情表現してくれている事に、彼は最大級の幸せを感じながら、時が優しく流れるのに身を任せていた。




瞳との電話を切った後、麻衣は側にあったベンチに腰をかけて夜空を眺めていた。

やっぱ瞳は知ってたんだね・・・
以前、瞳に一般論として浮気の事を聞かれた事があったけど、あれって暗に私の事を批判していたのかな・・・・・だとしたら、はっきり言ってくれれば良かったのに
確かに私がした事は許されない事だと思う
特に瞳はそういうの、絶対に許さない子だとも思う
けどさ、正直さっきの電話、私少しだけ納得いってないような気がするんだ・・・
勿論、浮気する人が何言ったってダメなのは分かってるけどさ・・・

麻衣は溜息をつきながら立ち上がった。

瞳、ひょっとして岬さんの事、気になってるとか?・・・だからあんなに怒ってるのかな・・・
いや、彼女に限ってそれはないか・・・和希さんがいるもんね・・・

力なく笑いながら、彼女は自宅へとゆっくり歩き始めた。




ほぼ同じ頃、岬はビールを飲みながら携帯を弄っていた。

瞳ちゃん、明日あのサンダル履いてきてくれるかな
まあ、どうせ来らすぐ裸になるんだけどさ・・・
だけど瞳ちゃん、そんなにあの彼氏の事が好きなのかな
焦って隠してたけど、バレバレなんだよね、彼氏の写真見てたの
あんだけ蕩けた顔でセックスしてんのに、その合間に彼氏の写真見るなんてさ、そんなに大事に思っている相手なのかって、さ・・・
どう考えたって俺の方がスペック断然上でしょ、てか、あんなチビと比較する事自体有り得ないっつうか、リカコが聞いたら怒り狂うレベルだろ
ん?あれか?チンポが俺よりデカイとか?・・・ははっ、それも無いか
・・・まあ、なんにせよ、ちょっとムカつくけどな
いつか瞳ちゃんには分からせてやらんとな・・・
取り敢えず、こっそりあいつのメルアドはゲットしたから、何かに使わせてもらうわ・・・

「おまたせ。どうぞ」
「悪いな、いきなり押しかけちゃって」
「残り物しかないけど、ごめんね」
「いいよいいよ、慶子の飯、最高に美味いから」
「今夜、どうするの?泊まってく?」
「いい?」
「勿論、てか、泊まって欲しいし」
「寝かせねえぞ?いいの?」
「ふふふ、壊れちゃう、かも」
「嫌か?」
「ううん、壊して」

茶髪のおかっぱが印象的な、綺麗に日焼けした隣の大学のセフレが作った夕食を掻き込む岬。
底なし沼のような彼の性欲のはけ口は、いつでもどこにでも転がっていたのだ。



21:00 : 投稿作品 : comments (12) : trackbacks (0)
<< 「交姦条件」 ロリビッチチョーイイネー!サイコー!(Blue Devil) : TOP : 「オッさん教師の女子高生妻がヤリチン男子に寝取られる話」(α-MODEL) >>

Comments

きたきたきたー 待ってました!!
...2013/08/27 09:09 PM
ふう・・・
...2013/08/27 09:23 PM
ふぅ、、、テイッシュテイッシュ
...2013/08/27 10:48 PM
エロいんだが瞳の自己弁護と行為の正当化がウザすぎて岬共々相応の報いを受けてほしいって思ってしまうw

どんな結末であれ作者様期待しております。
...2013/08/27 11:23 PM
もうコレは、アレだろ瞳は、数ヶ月後に今日写真取られた矢口真理状態のオチしかあり得ないだろ!
と言うことで岬、瞳、和希の修羅場をお願いしますw
...2013/08/28 12:43 AM
瞳がビッチすぎて寝取られって感じがしないなあ。
なんかこう、なんでなんでどうしてって心の奥を抉られるのが寝取られには必要だと思いますのよ。
まあ個人的な意見ですが。
...2013/08/28 01:37 AM
瞳氏勘違いの上におまいう過ぎるw
...2013/08/28 07:27 PM
訪問からやるの早いし毎回毎回拒めないんじゃなぁ
...2013/08/28 09:11 PM
「付き合ってる相手が浮気してる」ってのは理由としてでかいけどね。
付き合ってる相手と別れたくないけどでも許しがたいって場合、自分も浮気しちゃうってのは、まあ簡単な解決方法ではある。
...2013/08/29 01:42 PM
瞳は快楽だけじゃなくて、苦痛も与えるべき。ピアスとか。
...2013/08/29 03:09 PM
岬も瞳もラストで首くくってくれ
頼むから
ホントに
2人ともクズ過ぎる
カバ尾...2013/09/02 11:04 PM
ティッシュティッシュ
...2013/09/04 12:31 AM

Comment Form


  
・サーバー負荷によりコメントができない場合があります。
ブラウザ[戻る]でページに戻り、時間を置いてから再度書き込みしてください。


Trackbacks

Trackback url



【タグ:寝取られ】DLsite.com




[GAME] 
寝取られ作品特集第四弾
 
寝取られ作品特集第三弾

寝取られ作品特集第二弾
寝取られ作品特集第一弾(DLsite)

人妻特集
戦うヒロイン特集(Gyutto)

キーワード:寝取られ
未亡人特集(デジケット)

[BOOK]
寝取られ・NTR本特集第一弾
寝取られ・NTR本特集第二弾



    アクセスランキング ブログパーツ

NTRBLOGエントリーページ